【反り腰と前鋸筋の働き】理学療法士が解説する正しい姿勢改善と整体アプローチ

はじめに:反り腰とは何か?

「反り腰(そりごし)」とは、骨盤が前に傾き(骨盤前傾)、腰のカーブ(腰椎前弯)が過剰になってしまう状態を指します。
見た目には「お腹が前に突き出る」「お尻が後ろに出る」「背中が反る」といった姿勢で、女性に多く見られる特徴的な姿勢です。

反り腰は一見「姿勢が良い」と誤解されることもありますが、実際には腰痛・肩こり・脚のむくみ・猫背・ぽっこりお腹など、さまざまな不調の原因になります。

そしてこの反り腰の改善に深く関係している筋肉の一つが、「前鋸筋(ぜんきょきん)」です。
一見すると、腰とは関係なさそうなこの筋肉が、実は反り腰を作る「姿勢の崩れ」に大きく関わっています。


第1章:反り腰を引き起こす原因

反り腰は、単に「腰を反らせている」わけではなく、全身のバランスの乱れによって起こります。
代表的な原因を整理してみましょう。

1. 骨盤の前傾

骨盤が前に傾くことで、腰椎が反り、お腹が前に出てしまいます。
このとき、**腸腰筋・大腿直筋(太ももの前の筋肉)**が硬くなり、**腹筋群や臀筋群(お尻の筋肉)**が弱くなる傾向があります。

2. 胸郭(肋骨)の開き

骨盤が前傾すると、重心が後ろにずれ、上体を支えるために肋骨が前方に開きます。
その結果、肋骨の下部が開きっぱなしになり、呼吸が浅くなる腹圧が保てないといった問題も発生します。

3. 肩甲骨の位置異常

骨盤や肋骨の歪みは肩甲骨にも影響します。
肩甲骨が外側かつ下方にズレることで、前鋸筋が正しく働かなくなるのです。
この「前鋸筋の機能低下」が、反り腰を悪化させる重要な要素になります。


第2章:前鋸筋(ぜんきょきん)の基本構造と働き

1. 前鋸筋とは?

前鋸筋は、胸の横側(肋骨の外側)に位置する筋肉で、肩甲骨を前方かつ外側に引く働きを持ちます。
起始は第1〜8または9肋骨、停止は肩甲骨の内側縁です。
形が「ノコギリ状(鋸の歯のよう)」に見えるため、「前鋸筋」という名前が付いています。

2. 主な働き

  • 肩甲骨を前方へ引き出す(プロトラクション)
  • 肩甲骨を胸郭に安定させる
  • 腕を上げるときに肩甲骨の上方回旋をサポートする
  • 呼吸補助筋として吸気を助ける(肋骨を持ち上げる)

つまり、前鋸筋は単なる「腕を動かす筋肉」ではなく、姿勢を安定させるインナーマッスルでもあるのです。


第3章:なぜ前鋸筋が反り腰に関係するのか?

ここが最も重要なポイントです。
「腰」と「前鋸筋」は一見離れていますが、姿勢を支える連動性で密接に関係しています。

1. 肩甲骨の安定性と体幹のつながり

肩甲骨は胸郭(肋骨)に乗っており、肋骨は骨盤と連動して動きます。
前鋸筋が弱くなると、肩甲骨が後方に引かれ(肩が開く)、胸郭が前方に張り出してしまいます。
これにより、肋骨が開き、骨盤が前傾しやすくなり、腰が反るという連鎖が起こるのです。

2. 腹圧の低下

前鋸筋は腹横筋や横隔膜、骨盤底筋と連動して体幹を安定させています。
この連動が崩れると、腹圧(お腹の内側の圧力)が保てず、反り腰が固定化されます。

3. 呼吸の乱れ

前鋸筋は呼吸補助筋でもあるため、機能低下により胸式呼吸が過剰になり、腹式呼吸ができなくなることも。
これがさらに腹圧低下を招き、腰椎が過伸展して反り腰が強調されます。


第4章:反り腰改善における前鋸筋の活性化方法

1. 前鋸筋のストレッチではなく「活性化」が必要

前鋸筋は一般的に「使えていない」状態にあるため、伸ばすよりも**正しく働かせる(アクティベーション)**ことが重要です。

2. 壁プッシュエクササイズ(Wall Push)

  1. 壁に手のひらをつけて立つ(肘を軽く曲げる)
  2. 肩甲骨を背骨から離すように、壁を「押す」
  3. このとき、肩がすくまないよう注意する
  4. 息を吐きながら行う(腹圧を意識)
    前鋸筋が働く感覚(胸の横が熱くなる)が出ればOK

3. 四つ這いロールアウト(Serratus Rollout)

  1. 四つ這い姿勢で、肘を床につける
  2. そのまま前に体をスライドさせるように動かす
  3. 背中を丸め、肩甲骨を外に開くイメージ
    → 腹圧と連動した前鋸筋の収縮を感じられる

4. 呼吸とセットで行う

前鋸筋トレーニングの効果を最大限にするには、呼吸を意識することがポイント。
・息を吐く=前鋸筋・腹横筋が働く
・息を吸う=肋骨が広がり、肩甲骨が動く

この呼吸連動が、反り腰改善に不可欠な「胸郭と骨盤の協調性」を取り戻します。


第5章:整体・リハビリにおけるアプローチ例

理学療法士や整体師が反り腰に対して行う施術では、単に腰を緩めるだけでは不十分です。
以下のような流れで、前鋸筋を含めた全身連動の改善を図ります。

1. 姿勢評価

・骨盤前傾角度
・胸郭の開き(肋骨の角度)
・肩甲骨位置(外転・上方回旋)
・呼吸パターン(胸式・腹式)
これらを総合的に見て、どの部位が反り腰を引き起こしているかを分析します。

2. 筋バランス調整

  • 硬くなりやすい筋肉
     → 腸腰筋、大腿直筋、脊柱起立筋、広背筋
  • 弱くなりやすい筋肉
     → 前鋸筋、腹横筋、臀筋群、ハムストリングス

施術では、硬くなった筋肉をリリースしつつ、前鋸筋や腹筋群を**再教育(リトレーニング)**していきます。

3. 姿勢の再構築

整体後の一時的な変化だけでなく、「正しい姿勢を自分で維持できる体」を作ることが最終目標です。
前鋸筋を中心とした体幹安定トレーニングを行い、再発を防止します。


第6章:日常生活で意識したいポイント

1. 座り姿勢

・椅子に深く座り、骨盤を立てる
・背中を反らせすぎず、軽く腹圧をかける
・肩甲骨を軽く外に広げるよう意識(前鋸筋を使う)

2. 立ち姿勢

・お腹を軽く引き込み、肋骨を締める
・顎を軽く引き、頭が骨盤の真上にくるようにする
・かかと体重ではなく、母趾球にも体重をかける

3. 呼吸

・鼻から吸って、口からゆっくり吐く
・息を吐くときに、肋骨が内側に閉じるのを感じる
→ この動きが、前鋸筋と腹横筋を自然に活性化します。


第7章:反り腰と前鋸筋の関係を整体で改善するメリット

整体でのアプローチでは、単なるマッサージではなく、全身の動きの連動性を整えることができます。

メリット

  • 腰痛・肩こり・頭痛の改善
  • 呼吸が深くなる
  • 姿勢が美しくなり、ぽっこりお腹も解消
  • 運動効率が上がり、疲れにくい体になる

特に理学療法士による整体では、前鋸筋の働きを評価し、筋膜リリースやPNF(固有受容性神経筋促通法)を用いて**「使える筋肉」へ再教育**します。
これは自分では難しい部分を補ってくれる、非常に有効なアプローチです。


第8章:まとめ 〜反り腰改善は「腰」だけでなく「前鋸筋」から〜

反り腰は、腰だけの問題ではなく、
骨盤・肋骨・肩甲骨」という全身のつながりの中で起こる姿勢異常です。

その中でも前鋸筋は、

  • 肩甲骨を安定させる
  • 胸郭の動きを整える
  • 腹圧を支える

という重要な役割を担っています。

前鋸筋を正しく使えるようになることで、
反り腰の根本原因である「胸郭の開き」「骨盤前傾」「腹圧低下」が自然と改善していきます。

アクセス・お問い合わせ

シトラス ほぐし家 整体院/関節痛・肩こり・腰痛・膝の痛み改善サポート

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